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2025.01.28

「ユーザー心理に法則あり!ブランディング・プロモーションに役立つ心理学効果 第2弾~フレーミング効果~」 

化粧品ブランド&マーケティング担当者のためになる話では、様々なビジネスシーンで活用可能な心理学をお伝えするべく、「ユーザー心理を突いてコミュニケーションをしよう」というシリーズを始動しています。キャンペーンにおけるコミュニケーション戦略やプロモーション全般に役立つ効果があるので、ぜひこのシリーズを見て、迷った時の参考にしていただければと思います。 

第2弾となる今回は、「フレーミング効果」について活用する際のポイントと一緒に解説していきます。 

1.フレーミング効果

1-1.フレーミング効果とは? 

選択肢や情報が提示される枠組み(フレーム)によって、人々の思考や判断が影響を受ける心理現象を指します。本質的には同じことを意味していても、特定の部分に焦点を当てて強調すると、人はその部分を基準に物事を考え始めるため、判断や思考が大きく左右されてしまいます。 

これを利用すると、伝えたい情報を強調して見せることで、相手の受け止め方が変わり、意思決定に影響を与えられるということです。 

1-2.フレーミング効果の例 

フレーミング効果を証明した有名な実証実験があります。行動経済学者のダニエル・カーネマンと、心理学者のエイモス・トヴェルスキーが行った「アジアの疾病問題」です。この実験では学生に「600人の死亡が予想される架空の伝染病“アジア病”に備えるための対策として」2つの案から1つを選ぶように投げかけました。 

① 

対策A:600人のうち200人が助かる 

対策B:1/3の確立で全員助かるが2/3の確立で全員が死亡する 

この場合、圧倒的多数の回答者が対策Aを選びました。しかし、対策Aの言い回しを変えることで結果が変わってきます。次に以下の質問をしてみます。 

② 

対策A:600人のうち400人が死亡する 

対策B:1/3の確立で全員助かるが2/3の確立で全員が死亡する 

この場合、回答者の大半が対策Bを選びました。対策Bの内容は先程と全く変わっておらず、対策Aに関しても“600人のうち200人が助かる”と“600人のうち400人が死亡する”では本質的には同じ内容を示しています。それにも関わらず結果が変わったことから、人間の意思決定は印象の違いに大きく影響されていることが分かります。 

化粧品マーケティングにおける例を挙げて考えてみます。 

ファンデーションを売りだすとして、 

A:美容液成分80%配合のファンデ 

B:美容液成分でないものが20%配合のファンデ 

だと、明らかにAの方が印象が良いのが分かると思います。Bの場合美容液成分でない20%は何なのか、肌に悪くないのかと考えてしまいます。商品の良い面を前面に押し出すことで、良い印象を与えることができます。 

もう1つ例を挙げてみます。 

男性用の制汗剤を売りだすとして、 

A:暑い夏でもこれを使えば臭うことなく快適に過ごせます 

B:暑い夏にこれを使わないと臭って周りに迷惑です 

この場合、Bの「臭って迷惑をかけてしまう」という悪い面に意識を持っていく方が、危機を回避しようとして購買につながるというわけです。 

つまり、状況が良くなる商品を宣伝する場合はポジティブな表現にし、その商品によって悪い状況を回避できる場合はネガティブな表現にした方が効果的だということです。フレーミング効果を活用する際はどちらを強調するのか見極めることが重要です。 

2.フレーミング効果の活用ポイント

次にフレーミング効果を活用する際のポイントを4つお伝えします。 

2-1.利点の見せ方 

多くの化粧品や食品はそれらを使用することで状況が良くなる商品であるため、ポジティブな面を強調することが大切です。 

・顧客の5%だけが満足していません→顧客満足度95% 

と表した方が、同じことを意味していても満足度の高さを押しだすことができます。 

2-2.リスクの見せ方 

エイジングケア製品や制汗剤、脱毛クリームなどそれらを使うことで悪い状況になるのを避ける商品であれば、使わないことによって起きるネガティブな状況を強調するのが効果的です。 

・クリームでシミ、しわを改善→何もしないとエイジングが進んでいきます 

2-3.数字の見せ方 

数字を用いる時は“単位”に注意する必要があります。1日限定セールよりも24時間限定セールのほうが、時間が短い印象を与えることができ、ビタミンC1gよりも1,000mgの方が量が多いという印象を与えることができます。 

・1カ月お試し無料→30日間お試し無料 

2-4.価格の見せ方 

価格の表記でもフレーミング効果を活用できる場面が多くあります。 

5点セット購入で20%割引→5点セット購入で1点無料 

・2着購入で半額→2着目無料 

どちらも支払う金額は同額ですが、“無料”というフレーズを使うことで、お金を払うという損失を回避できる印象を与えられます。 

また、分割することで購入ハードルを下げる方法もあります。 

・サロン級の美顔器が36,000円→サロン級の効果を1日あたり100円以下で 

高額な商品をいかに安く見せるか、割引額をいかに多く表現するかがポイントとなります。 

3.フレーミング効果を使うメリット 

マーケティングでフレーミング効果を活用する最大のメリットは「新しい訴求内容」を用意しなくて済むことです。新しい有効成分の開発やベストコスメを獲得したなどの実績がなくとも、効果の見せ方や表現方法を工夫するだけで、消費者の印象を大きく変えて購買行動につなげられます。 

 

4.さいごに

本質的には同じことを意味していても、特定の部分に焦点を当てて強調するフレーミングを活用することで、印象ががらりと変わり相手の意思決定に影響を与えるということが分かりました。 

活用する際には、 

  • 利点の見せ方 
  • リスクの見せ方 
  • 数字の見せ方 
  • 価格の見せ方 

に注視して、ポジティブな面を強調するのか、ネガティブな面を強調するのか見極めることを意識してみて下さい。