化粧品ブランド&マーケティング担当者のためになる話では、キャンペーン立案、販売計画などマーケティング関係のプランニングの手助けになる、マーケティング法則シリーズという企画を始動しています。このシリーズでご紹介していく法則を頭の片隅に置いて、プランニングで迷った時の参考にしていただければと思います。第2弾となる今回は、「ランチェスターの法則」について解説していきます。中小・新興企業が大手企業に勝つための戦略をお伝えします!
目次
ランチェスターの法則
ランチェスターの法則とは?
ランチェスターの法則とは、競争の状況によって戦略を変えるべきとする考え方のもと、「強者」と「弱者」がそれぞれ取るべき戦略を示した概念のことです。イギリスのエンジニア、フレデリック・ランチェスターが第1次世界大戦の際に提唱した数理モデルで、第2次世界大戦の際に軍事戦略のモデルとして発展しました。現在では、ビジネスモデルとして多くの企業で実践されています。
ランチェスターの法則には2つの基本法則があるので詳しく解説していきます。
第一の法則
第一の法則は、少人数や小規模な競争の場面で有効な戦略を示しています。
ランチェスターの第一法則では、「兵数 × 武器性能(質)=戦闘力」の計算方法を用いて競争力を比較してみます。
たとえば、A軍とB軍が戦う場合:
A軍:兵数 10人×武器性能 1(つまり「質」の部分)=10
B軍:兵数 5人×武器性能 1=5
この計算では、A軍の戦闘力は「10」、B軍は「5」なので、兵数(軍の規模)が多いA軍が優位に立っていることがわかります。
次に武器性能(質の部分)を変えてみます。
A軍:兵数 10人×武器性能 1(つまり「質」の部分)=10
B軍:兵数 5人×武器性能 3=15
この場合、A軍の戦闘力は「10」、B軍は「15」なので、兵数(軍の規模)が少ないが武器性能が高いB軍が優位になりました。
このように、第一の法則が当てはまる小規模な競争の場面では、数に加えて「質や強み」を最大限活かすことが重要になります。
第二の法則
第二の法則は、大規模な競争や市場シェア争いのような「数の力」が優位になる状況に適用されます。この法則では、戦闘力は「兵数の二乗」に比例するため、数の多さが圧倒的な影響力を持つとされます。「兵数の2乗 × 武器性能(質)=戦闘力」の計算方法を用いて先程と同じ条件で比較してみます。
A軍:兵数 10²人×武器性能 1(つまり「質」の部分)=100
B軍:兵数 5²人×武器性能 1=25
この計算では、A軍の戦闘力は「100」、B軍は「25」なので、兵数(軍の規模)が多いA軍が圧倒的に優位になります。
次に第一の法則の時と同じ条件で武器性能(質の部分)を変えてみます。
A軍:兵数 10²人×武器性能 1(つまり「質」の部分)=100
B軍:兵数 5²人×武器性能 3=75
この場合、A軍の戦闘力は「100」、B軍は「75」なので、いくら武器性能が高くともB軍は勝つことはできません。 第二の法則に当てはまるような大規模戦では「数の多さ」が圧倒的な強みとなります。
ビジネスへの応用
2つの基本法則をビジネスに当てはめて考えてみます。
第一の法則に鑑みると、兵数(会社の規模)で劣る中小企業や新興企業は、大企業がカバーしきれていない特定のニッチ市場に絞り込み、大手企業とは異なる独自性や優れたサービスで競争優位を築く必要があります。
一方で第二の法則に基づいて考えると、兵数(会社の規模)で優位に立っている大企業は市場シェアを維持・拡大するために大量の資金や人員を幅広い分野に投入し、中小・新興企業に市場に入る隙を与えない戦略が有効的となります。
中小・新興化粧品メーカーがとるべき戦略
ランチェスターの法則は「弱者の逆転のための法則」とも呼ばれています。市場の中で弱者の立場である中小・新興化粧品メーカーが大企業と戦うためにどのような戦略をとるべきなのか4つお伝えします。
一点集中攻撃
まず重要なのがビジネス領域や地域、ターゲット層を絞ることです。幅広く事業を展開した方がリスクを分散させられると思われがちですが、それではすでにシェアを確立している大手企業に太刀打ちできません。競合の多い市場・顧客を狙うのではなく、競合が1社あるいは少数しかいない市場に狙いを定め、そこに資本を集中させることで、一部のビジネス領域で局地的に1位を目指すことができます。
接近戦
EC販売では知名度や広告にお金をかけられる大手企業に勝つことは難しいです。そのため、オフラインで実際に顧客と近い距離で接客し、顧客との接触頻度、時間を多く設けて顧客の心を掴む必要があります。具体的には卸売りをやめてユーザーへ直接販売したり、美容メディアが開催するイベントに出展したりなどが挙げられます。
奇襲攻撃
最後に大手企業がカバーしきれていない隙を突く奇襲攻撃についてDr.ルルルン株式会社を例に説明します。いまではシートマスクのシェア1位を誇るルルルンですが、販売開始されたのが2011年と比較的最近です。従来シートマスクといえば美容液に浸してあり特別な日のためのスペシャルケアとして使うのが一般的でした。しかしルルルンは美容液ではなく化粧水に浸すことによって「毎日使えるシートマスク」を販売し、新しい領域で地位を確立してきました。いまでは毎日使えるシートマスクといえばルルルンを最初に思い浮かべる人が多いと思います。またルルルンは全国でご当地フェイスマスクの「旅するルルルン」を店頭販売し土産物として知名度を上げることに成功しました。
さいごに
競争の状況によって戦略を変えるべきとするランチェスターの法則を理解しておくことで、「強者」と「弱者」がそれぞれ取るべき戦略が分かるようになります。「弱者の逆転のための法則」とも呼ばれており、
・一点集中攻撃
・接近戦
・奇襲攻撃 を仕掛けることで、中小・新興企業にも大手企業に勝てる可能性があります。