目次
はじめに
今やデジタル技術の発達により、オンラインで商品を購入することも多くなりました。
そんな中で、オフライン店舗の役割は単なる「販売の場」から、「ブランドと顧客の最適な出会いを創出する場」へと変化しています。
本企画では、「コスメのテーマパーク」とも呼ばれ、過去最大のブランド数を誇る@cosme TOKYOを取り上げます。
なぜ@cosme TOKYOが「ヒット発祥の地」となり得るのか。その要因を「売り場」「データ」「ブランド活用」の3つの視点から解剖し、これからの店舗戦略やポップアップストア企画に活かせるヒントを探ります。
@cosme TOKYOとは
原宿駅前に位置する、3フロア構成の化粧品専門小売店。「コスメのテーマパーク」とも呼ばれ、取り扱いブランド数は過去最多を誇り、圧倒的な品ぞろえを実現している。
試したいを促進させる店舗設計
ランキング棚
入口からまっすぐ進むと、ベストコスメアワードを受賞したアイテムの数々が並んでいます。選ばれた理由などが一目でわかるディスプレイにより商品の魅力に引き込まれます。また、ウィークリーランキング棚もあり、旬のアイテムや売れ筋商品が並ぶことで、購買意欲が高まります。来店者はこうした環境の中で選ぶ楽しさを味わうことができます。

https://www.cosme.net/store/flagship/tokyo/about/walk/
テスターバー
@cosme TOKYOでは、約600ブランドのすべてがトライアル可能です。店内にはパフやコットンに加え、手を洗ったりメイクを落としたりできるウォータースペースも完備されています。気になるアイテムを気軽に試すことができ、購入前に使用感を確かめることもできます。
リアル店舗ならではの試す・比べる・確かめるという体験価値によって、納得感のある買い物体験を提供しています。

https://www.cosme.net/feature/2025-tokyo-guide/
ついで買いを促す導線
レジ前まで進んでいくと導線には様々な種類の話題アイテムが小さな説明書きとともに並んでいる。思わず買ってしまいそうになる。それぞれの商品には特徴や魅力がひと目で分かる情報が添えられており、思わず手に取りたくなる工夫が施されています。こうした陳列は、最後まで購買意欲を高める動線戦略によって新しい発見や試したい気持ちを抱きながらレジへと進むことになります。
ミニコスメコーナー
化粧品は数が多くて、結局どれを買ったらいいか迷ってしまうことも少なくありません。ミニコスメコーナーはそういった消費者心理に寄り添う形で設計されています。人気ブランドのアイテムをミニサイズで気軽に試すことができるため、自分に合うコスメを探したい人にとって理想的なスペースとなっています。
少しだけ試してみたいという購買行動を後押しすることで、新しいコスメとの出会いを生み出しています。

https://www.cosme.net/feature/2025-tokyo-minisize
圧倒的な顧客データ活用
・テスター使用頻度の計測
来場者がどの製品に興味を示したかなどを把握することで、商品の魅力や改善点を分析できます。
・共通カウンセリング台帳
ブランド横断型で、個々のニーズに応じた接客が可能です。
https://business.cosme.net/column/tokyo
ブランド活用
ブランド側の戦略
①消費者行動データによって、商品の反応を可視化できます。
@cosme TOKYOでは、店頭でのテスター使用や膨大な購入データなどを統合的に分析することが可能です。そういった指標を確認することで、ブランドのマーケティング戦略に活かすことができます。
②限定ブースを設けることでSNS映えを狙ったプロモーション効果を期待できます。
ポップアップスペースで、ブランドの世界観を表現できる視認性の高いイベントスペースを利用できる点が明記されており、SNSでの話題化を通じて認知拡大を見込めます。
③新しいブランドは現場でのリアルな反応を確かめることができます。
ポップアップだけではなく、ネクストトレンドゾーンや初出店ブランドを扱うコーナーが設けられています。こうした売場設計を通じて、商品のリアルなデータを取得し分析することができます。
@cosme TOKYOの戦略
① 多様なブランドとコラボすることで集客を見込める。
@cosme TOKYOでは様々なブランドの商品を売り出すことで、リアルでの顧客の反応をデータ化し、さらなる提供につなげ来店者を増やすことが期待できます。
②情報発信力を高めることができる。
@cosmeでは多様なブランドのランキングや口コミ、顧客データを活用することができ、効果的にプロモーションを行うことができます。
ポップアップを通じた体験型集客
各ブランドが行うポップアップでは、毎回多くの来場者で賑わう印象を受けます。短期間で商品を知ってもらい、購入につなげることがポップアップの成功のカギとなります。そのため、プレゼント企画やサンプルの配布、SNSでの波及は欠かせないものになっています。ではブランドはどのようにして集客を行っているのでしょうか。事例を以下で紹介します。
1 Jo Malone London(開催時期:2021/6/9~6/15)
・プレミアムヴィジョンを用いた訴求
・ブランドフォローで人気の香りサンプル商品を配布
・無料刻印サービスや限定デザインによるラッピングサービスで、プレゼント用の購入を促進


https://business.cosme.net/case/report/cosme-tokyo_magazine04?hs_amp=true#
2 ドランク エレファント(開催時期:2024/7/31~8/6)
・フォトスペースでの写真をSNS投稿するとサンプルプレゼントという仕掛けでSNSでの波及効果を狙う
・イベントギフトとして製品12,000円(税込)以上お買上げの方に、ロゴ入りオリジナルタンブラーもプレゼントし、周囲の人も巻き込む戦略


3 CEZANNE(開催時期:2024/3/13~3/19)
・推しコスメ投票の参加型コンテンツとサンプルプレゼントで商品認知を促す
・2階ではデモンストレーションによりクッションファンデを体験できる仕様
・商品を2点購入いただいた方には、ガチャ1回のチャレンジができる特典によって複数買いを促すコンテンツ


https://business.cosme.net/case/report/cosme-tokyo_magazine_19
まとめ
このように@cosme TOKYOはブランドと顧客の最適な出会いを創出しています。この店舗がヒット発祥の地となり得る理由は、大きく分けて3つの視点から理解できます。まず売り場では、ベストコスメ受賞アイテムやウィークリーランキング棚、テスターの豊富さなど、来店者の購買意欲や発見を促す動線設計が施されています。次にデータでは、テスター使用頻度や棚前滞在時間、購買データなどのオフライン行動をオンラインの口コミやランキング情報と連動させ、ブランドはリアルな顧客反応を可視化・分析できます。最後にブランドの活用法では、ブランドはポップアップや体験型展示を通じて自社の世界観を訴求し、短期間で集客や購買につなげることが可能です。
これらの要素により、@cosme TOKYOはブランドと顧客双方に価値を提供し、新しいヒットを生む場として機能しています。店舗戦略やポップアップ企画、販売戦略を考える際の参考になります。