「化粧品マーケティング担当者のためになる話」では、運営会社WTCの社員が、それぞれの専門分野のノウハウや最新トレンドを発信する企画を進めています!
第3弾となる今回は、WTCのエンジニア 渡邉歩子が注目する最新技術“NFT”について、そもそもNFTとは何かということや化粧品業界での活用事例について解説します。
目次
NFTとは?
最近、化粧品業界ではNFT(Non-Fungible Token)を活用した新しい試みが見られます。NFTを一言で表すと「偽造不可能な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」です。
従来、デジタルデータは容易にコピー・拡散ができるため、現物の宝石や絵画などのような資産価値があるとはみなされませんでした。しかし、NFTを使うことで「代替が効かない唯一無二の証明を持つデータ」になり、資産価値を付与することができます。
例えば、1枚の絵を普通のデジタルデータで発行すると、コピーしてインターネット上でいくらでも拡散することができます。しかし、NFTとして発行すればコピーができないため、その絵のデータは所有者だけが持つ限定的なものとなり、一種のデジタルコレクターアイテムとしての価値が生み出されます。この技術を化粧品業界に応用しようとする動きが出始めています。
化粧品業界でのNFT活用事例紹介
化粧品業界でのNFTの活用はまだ始まったばかりですが、既にいくつかのブランドが取り組みを開始しています。
GIVENCHY
化粧品ブランドとして、初めてNFTアートを制作したのはフランスのラグジュアリーブランド「GIVENCHY」です。ロンドンのギャラリーオーナーでLGBTQIA+活動家のAmar Singhと、アーティストのRewind Collectiveと共同でデジタルアート作品を制作・販売し、収益はフランスのLGBTQ+支援組織に寄付され、世界的な化粧品ブランドがNFTを活用した施策を進める成功例となりました。
CLINIQUE
アメリカの「CLINIQUE」も、NFTメイクアップキャンペーン「A Metaverse More Like Us」をメタバース上で展開し、個性的なメイクを施したアバターを作成しました。メタバース上で表現の多様性を尊重したコミュニティを構築することで、「前向きな価値観を作り出すリーダー」としてのブランディングを試みました。
LUSH
英国発のLUSHは、ブランドとして初となるNFTアートを含んだアプリ限定ボックス『ユニコーンプープ ボックス』を発売しました。ボックスの中には、バスボムやソープと一緒にNFTアートが手に入るカードも同封されています。QRコードが印字されたカードを読み取ることで、ユニコーンプープボムがデジタルアートになる仕掛けとなっており、単純なバスボムだけではなくアートも一緒に楽しむことができます。
shu uemura
国内初のブランドshu uemuraは、著名イラストレーターのLong Shu氏がデザインした3点のNFTアートを販売しました。3点の作品はそれぞれ女性の友情・娯楽・キャリアをイメージしたものとなっています。
NFT活用によるメリット
認知度を高める
事例で紹介した「GIVENCHY」や「CLINIQUE」、「shu uemura」のようにブランド独自のデジタル資産や、メタバースでの美容体験を通じて、話題性を集めてブランド認知度を高めていくような施策を展開することができます。
特別感を与えられる
「LUSH」のようにNFTを実物の商品と一緒に発売することで、商品そのものを楽しむだけでなく、デジタル上での付加価値を付け加えられるため、消費者はより特別な体験を享受することができるようになります。
これから台頭する?“香りのNFT”
さらに先進的な技術としてこれから台頭してくると思われるのが“香りのNFT”です。Horizon株式会社が香りのデジタル化とブロックチェーン技術を用いた匂いのデジタルコンテンツの管理、販売を進めています。気になる香りのNFTを購入すると、数種類の香りの元が組み込まれた専用ディフューザーを用いてその場で香りを作り出し体験できるという仕組みです。この技術を活用することで、化粧品メーカーは商品の香りサンプルを作るコストを省くことができ、広告代理店は香りを使って人の認知に強く働きかける広告を打ち出せるなど、可能性は大きく広がっています。今後、どのように活用されていくのか注目が集まっています。