NOVは、華やかなイメージが先行しがちな化粧品業界において、皮膚の専門家との連携や研究に基づいた製品開発、そして肌へのやさしさを徹底的に追求するという実直かつ専門的なアプローチで独自の地位を築き上げてきました。創業から30年以上にわたり、一過性のブームに左右されることなく、敏感肌に悩む多くの人々から厚い信頼を得ています。
そのブランド戦略には、競争を勝ち抜き、薬機法といった規制環境の中でも顧客に深く長く愛されるための重要なヒントが隠されています。本日は、NOVの揺るぎないブランド基盤、信頼を築くコミュニケーション、そして薬機法と共存する表現テクニックを徹底解説します。
目次
競争市場でなぜ強い? NOVを「敏感肌のプロ」たらしめる、揺るぎない基盤
多くの化粧品ブランドがひしめき合う中で、NOVが敏感肌領域で特別な存在感を放つのはなぜでしょうか。それは、創業以来ブレることのない、確固たるブランド基盤があるからです。これは、競合が容易に真似できない、NOV独自の「強さの源泉」と言えます。
ただの「低刺激」ではない、皮膚の専門家との共同研究が生む信頼性

引用:ノブ公式オンラインショップ
https://noevirgroup.jp/nov/?srsltid=AfmBOoqlr-14YrBdX7Hk5veZKp2mIFkQAje_Y1nWF2qb8bGDdrrmJjYX
NOVの最大の強みは、製薬会社である常盤薬品工業が、皮膚科医や研究者と共同で研究開発を行っている点です。これは単に「低刺激」を謳うだけでなく、皮膚疾患に関する深い知見に基づいた製品設計が行われていることを意味します。
専門家との連携
開発段階での専門家からの意見や、実際の医療現場での使用経験が製品にフィードバックされることで、その信頼性は一層高まります。皮膚科医が患者に推奨するという事実は、何より強力なエビデンスとなるのです。
厳格な製品テスト
敏感肌の方を対象としたパッチテストやアレルギーテストなどを実施し、その結果を開示することで、製品の安全性に対する真摯な姿勢を示しています。もちろん、「すべての方にアレルギーや皮膚刺激が起こらないわけではありません」といった但し書きは必須ですが、テスト実施自体が信頼に繋がります 。
こうした背景は、生活者にとって「安心して試せる」という大きな動機付けとなり、競合ブランドとの明確な差別化要因となっています。
ブレない軸が強みになる「敏感肌特化」が生む明確なブランドポジショニング
「すべての人に良い化粧品」ではなく、「敏感肌に悩む人のための化粧品」という明確なターゲット設定も、NOVの強さの源泉です。
ターゲットへの深い理解
敏感肌という特定の悩みにフォーカスすることで、その悩みの多様性、肌状態の揺らぎやすさ、抱える不安などを深く理解することができます。これにより、製品開発だけでなく、コミュニケーションや情報提供も、よりターゲットに寄り添ったものになります。
選択肢の明確化
敏感肌に悩む生活者は、使える化粧品が限られる、新しい製品を試すのが怖い、といった悩みを抱えています。そんな中で、「敏感肌のためのNOV」という分かりやすい存在は、迷える生活者にとっての明確な選択肢となります。
専門性の構築
一つの領域に特化し続けることで、「敏感肌のことならNOV」という専門家としてのブランドイメージを確立し、信頼度を高めることができます。
広範囲なターゲットを狙うブランドが多い中で、あえてニッチ市場に深くコミットし、そこで「第一人者」としての地位を築き始めたのです。
長い歴史が証明する製品への安心感
1985年の誕生以来、30年以上にわたりブランドを継続しているという事実も、NOVの揺るぎない強みです。長期間にわたり多くのユーザーに支持されてきたという実績そのものが、製品の安全性と有効性に対する信頼の証となります。また、単に古いだけでなく、時代のニーズや研究の進展に合わせて製品をリニューアルし続けている点も重要です。常に最新の知見を取り入れつつ、ブレない軸を持ち続けるバランス感覚が、長期的な支持に繋がっています。
華美な訴求は不要? NOV式「顧客の心に刺さる」信頼コミュニケーション
目を引く広告やインフルエンサーによる華やかなプロモーションが主流の化粧品業界において、NOVのコミュニケーションは一見控えめに見えるかもしれません。しかし、その実直なアプローチこそが、敏感肌に悩むユーザーの心に深く刺さる理由です。
「科学的根拠」を顧客視点に翻訳する表現力
NOVのコミュニケーションは、単に科学的なデータを羅列するのではなく、それを敏感肌に悩む顧客が「自分事」として理解できるよう、分かりやすく誠実に翻訳する表現力が特徴です。
試験結果の「意味」を伝える
パッチテストやアレルギーテスト済みの事実だけでなく、それが「肌へのやさしさを確認するためのテストであること」「敏感肌の方にとって安心材料となること」といった、顧客にとってのメリットを丁寧に説明します。
成分の働きを「肌実感」に結びつける
配合成分の専門的な名称だけでなく、その成分が「肌のバリア機能をサポートし、外部刺激から肌を守る」「乾燥を防ぎ、かゆみを和らげる」といった、肌で感じられる効果や悩みの解決にどう繋がるのかを具体的に伝えます。


引用:ノブ公式オンラインショップ
https://noevirgroup.jp/nov/c/cnov3
不安に寄り添う言葉選び
「ピリピリしやすい」「乾燥でかゆみが出やすい」など、敏感肌特有の肌感覚に寄り添った言葉を用いることで、「このブランドは私の悩みを分かってくれている」という共感と安心を生みます。
これらのコミュニケーションは、単なる製品の説明に留まらず、顧客の抱える悩みへの理解と、それに対する真摯な解決策の提示という形で行われます。
「専門家のお墨付き」を信頼資産として提示する
皮膚科医との連携はNOVの基盤ですが、それをコミュニケーションでどう活用するかが重要です。
医療機関での取り扱い実績を明示
「全国の医療機関でも取り扱われています」といった事実は、製品の安全性と信頼性を静かに、しかし力強く伝えるメッセージとなります。
共同開発や監修の事実を適切に表示
皮膚科医との共同開発であることや、ウェブサイトコンテンツを専門家が監修していることなどを明示し、情報の信頼性を高めます。

引用:ノブ公式オンラインショップ
専門家による解説コンテンツ
製品の紹介だけでなく、敏感肌のメカニズムやケア方法について専門家が解説するコンテンツを提供することで、ブランド全体の専門性と信頼性を強化します。
これは、外部の権威である専門家の評価を、顧客への安心材料として適切に提示するコミュニケーション戦略です。

引用:ノブ公式オンラインショップ
https://noevirgroup.jp/nov/brand/skincare/sensitive-skin.aspx
対話と共感を促す情報設計
NOVのコミュニケーションは、一方的な製品の「売り込み」ではなく、顧客との「対話」や「共感」を生むような情報設計が意識されています。
実際に製品を使用したユーザーの「正直な声」を掲載することで、製品への信頼性を高め、共感を促します。また、ユーザーからよく寄せられる質問とその回答を丁寧に掲載することで、疑問や不安をその場で解消し、顧客の「知りたい」に応えます。他にも、サンプリングやトライアルの提供も行っています。肌に合うか不安な敏感肌ユーザーがリスクなく製品を試せる機会を提供することは、「まずはお客様自身で確かめてください」という、顧客への信頼に基づくコミュニケーションであり、ポジティブな体験を生む出発点となります。
これらの手法は、顧客自身が納得して製品を選べるようサポートし、使用後のポジティブな体験を通じてブランドへの信頼を深めてもらうことを目的としています。
薬機法を「信頼のフィルター」に変える表現戦略
化粧品プロモーションにおける最大の難関の一つが薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)です。しかし、NOVはこれを単なる規制としてではなく、むしろ「信頼性」を高めるための機会として活用しているように見受けられます。
NG表現を「信頼の証」に変える言い換えの技術
薬機法では、化粧品で謳える効果効能の範囲が定められています。「治療」「改善」「治る」といった医薬品的な表現はNGです。NOVは、こうした規制の中で、製品のメリットを誠実に伝えるための表現テクニックを駆使しています。
具体的な効果効能の範囲で表現
「肌荒れを防ぐ」「皮膚をすこやかに保つ」「肌を整える」「乾燥による小ジワを目立たなくする(効能評価試験済み)」など、認められた効能効果やその範囲内で具体的に表現します。
「〜へ導く」「〜をサポートする」といった穏やかな表現
断定的な効果ではなく、肌の状態を「より良い方向へ導く」といったニュアンスで伝えます。
成分名と事実を結びつける
「〇〇成分配合で、肌のバリア機能をサポートします」のように、成分名とその科学的な働きを事実に基づき伝えます。(ただし、成分名を出しただけで医薬品的な効果を暗示させるのはNG)

引用:ノブ公式オンラインショップ
https://noevirgroup.jp/nov/brand/product/nov3.aspx
これらの表現は、一見控えめですが、薬機法を遵守しているという姿勢そのものが、特に肌トラブルに悩むユーザーにとっては「このブランドは嘘をつかない」「信頼できる」というメッセージとして伝わります。
どこまで言える?エビデンスと表現の境界線を見極める
科学的なエビデンスがあったとしても、それをそのまま広告表現に用いることができるとは限りません。薬機法では、「化粧品として認められている範囲の効果効能」を超える表現はできません。
研究結果の扱い
自社で有効性を示す研究結果があっても、それを直接的に「〇〇が治る」といった広告表現に繋げることはできません。あくまで研究結果の事実は事実として、広告では化粧品の範囲内で表現する必要があります。
承認された効能効果の確認
医薬部外品の場合は、承認された効能効果の範囲内でのみ表現が可能です。化粧品の場合は、化粧品の効能効果の範囲(56項目など)を参照する必要があります。
暗示表現にも注意
直接的なNGワードを使わなくても、特定の疾患名と製品を並べたり、ユーザーの深刻な悩みに過度に寄り添いすぎる表現は、暗示として医薬品的な効果を標榜していると見なされるリスクがあります。
NOVは、このエビデンスと表現の境界線を慎重に見極め、過剰な期待を抱かせない、誠実な表現を徹底していると考えられます。これは、長期的な信頼関係を築く上で非常に重要です。
薬機法遵守がブランドにもたらす「誠実さ」という付加価値
薬機法遵守は、単なるリスク回避ではありません。適切に対応することで、ブランドに「誠実」「信頼できる」「安心安全」といったポジティブなイメージを付加することができます。
消費者からの信頼
肌に悩みを持つ消費者は、誇大広告に不信感を抱きやすい傾向があります。薬機法を遵守し、正直な情報提供を行うブランドは、消費者から「信頼できる」と評価されやすくなります。
企業の信頼性向上
薬機法への対応は、コンプライアンスを重視する企業姿勢の表れでもあります。これは、顧客だけでなく、取引先や社会全体からの信頼性向上にも繋がります。
NOVの事例は、薬機法という制約を逆手にとり、それをブランドの「誠実さ」という付加価値に変えることができる、という重要な示唆を与えてくれます。
まとめ
常盤薬品工業の敏感肌ブランドNOVの戦略を紐解いてきましたが、いかがでしたでしょうか。薬機法という制約がある中でも、NOVはそれを逆手に取り、「安心・安全」をブランドの核としています。これは、製品の基盤(製薬会社品質、専門家連携)と、顧客接点での誠実な情報提供、そして法律を遵守した正直な表現が一体となって初めて実現するものです。
自社ブランドの揺るぎない価値を見つけ、それを誠実に伝えること。そして、薬機法を正しく理解し、その範囲内で最大限にブランドの魅力を伝える創意工夫こそが、競争が激化し、生活者の目が肥えた現代の化粧品マーケティングにおいて、他社との差別化を図り、顧客との強固な繋がりを築くための最も確実な「勝ちパターン」なのかもしれません。