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はじめに:なぜSDGsマーケティングは“響かない”のか? 消費者の本音を読み解く
「環境にやさしいから買おう」——そんな言葉だけでは、もう消費者の心を動かせなくなっています。
多くの企業がSDGsを掲げ、環境や社会への配慮を発信していますが、「それで、私に何の意味があるの?」という声が聞こえてくるのも現実です。
その理由は、SDGsが“目的”になってしまっているからかもしれません。
「持続可能性に取り組んでいます」と伝えるだけでは、どうしても表面的に見えてしまう。人々が求めているのは、美しい言葉よりも「この企業は本当に信じられるか」という感覚なのです。
だからこそ今、必要なのは「売上」と「信頼」の両立。
サステナビリティをマーケティングの“飾り”ではなく、ブランドの“根っこ”として育てていくことが求められています。
その答えのヒントをくれるのが、フランス生まれの自然派コスメブランド、「ロクシタン(L’OCCITANE)」です。
第一章:ブランドの根っこにある、ロクシタンのサステナビリティ

引用:2025年10月23日 ロクシタン公式
https://jp.loccitane.com/cultivators-of-change
ロクシタンは1976年、南フランス・プロヴァンスの小さな町で生まれました。
創業者オリビエ・ボーサンは、地元の植物や伝統的な製法を大切にしながら、「自然と人への敬愛」をブランドの中心に据えました。つまり、ロクシタンにとってのサステナビリティは“あとから足されたもの”ではなく、“はじめから息づいていた理念”なのです。
この姿勢は今も変わらず、ブランドのあらゆる活動に根づいています。
たとえば——
原料調達:フェアトレードで地域社会を支援
シアバターはアフリカ・ブルキナファソの女性協同組合からフェアトレードで仕入れています。公正な価格での取引を続けることで、現地の女性たちの自立や雇用創出を支えています。

引用:2025年10月23日 ロクシタン公式
https://jp.loccitane.com/CSRmonth2022#quiz
容器リサイクル:消費者が参加できる仕組みづくり
店頭でのリサイクルプログラムやリフィル製品の導入など、誰もが気軽に環境配慮の行動に参加できる仕組みをつくっています。

引用:2025年10月23日 ロクシタン公式
https://jp.loccitane.com/CSRmonth2022#quiz
社会貢献:視覚障がい者や女性支援への継続的な取り組み
ロクシタン製品には点字が刻まれており、視覚障がいのある方にも情報が届くよう配慮。女性支援や教育活動など、社会とのつながりを大切にする活動も継続しています。

引用:2025年10月23日 ロクシタン公式
https://jp.loccitane.com/CSRmonth2022#quiz
こうした取り組みは、CSRという“企業の義務”ではなく、ブランドの美学として存在しています。
だからこそ、ロクシタンの「やさしさ」は一過性ではなく、ブランド全体の“空気感”として伝わってくるのです。
第二章:消費者の心に届く「ストーリーテリング型」SDGsコミュニケーション

引用:2025年10月23日 ロクシタン公式
ロクシタンのコミュニケーションには、どこかあたたかさがあります。
「私たちはこんな取り組みをしています」と語るよりも、見た瞬間に“感じられる”デザインや体験を大切にしているのです。
たとえば、SNSや店頭で目にする南仏の風景、季節の花々、生産者の笑顔。どれも「サステナブルであること」を直接語らなくても、自然とブランドの姿勢が伝わってきます。
店頭では、リフィルステーションや量り売りサービスを通して、“環境にやさしい行動を楽しむ”体験ができます。
香りに包まれた空間で、気づけば自分の手の中にあるボトルが地球にもやさしいものだった——そんな気づきが、ブランドへの共感につながっていくのです。
つまりロクシタンは、「伝える」よりも「感じてもらう」ことを大切にしている。
サステナビリティを“義務感”ではなく、“心地よい選択”として表現しているのです。
それが、多くのファンを生み出す理由のひとつと言えるでしょう。
第三章:ロクシタンが実践する、「信頼」と「売上」を両立させるSDGs戦略

引用:2025年10月23日 ロクシタン公式
https://jp.loccitane.com/pages?fdid=Gift
ロクシタンの魅力は、言葉と行動がきちんと結びついているところです。
どんなに素敵なメッセージを発信しても、行動が伴っていなければ、今の消費者は敏感に見抜きます。
ロクシタンは、取り組みの内容や進捗をオープンにし、地道に続ける姿勢を崩しません。
そこには、「透明性」「継続性」「共創」という3つのキーワードがあります。
一方的に“教える”のではなく、消費者や地域の人たちと“ともにつくる”姿勢が信頼を生んでいます。
こうした姿勢は、結果として売上にもつながります。
「信頼できるブランドだから買う」——この循環がロクシタンを支えているのです。
SDGsマーケティングとは、決して特別な取り組みではなく、ブランドの約束を丁寧に守り続けること。それが、ファンとの長い関係を育む最も確かな方法です。
まとめ:ロクシタンの事例に学ぶ、サステナブルブランドのつくり方
ロクシタンの事例から見えてくるのは、「サステナブル=特別なこと」ではないということ。
大切なのは、企業と消費者の間に“誠実な関係性”を築くことです。
環境へのやさしさや社会貢献はもちろん大事ですが、それを「自分ごと」として感じてもらえるようにすること。
そのためには、ロクシタンのように“体験”を通して自然に伝える工夫が欠かせません。
これからのSDGsは、数字や指標で語るものではなく、人と人との信頼で育てていくもの。
マーケティング担当者にとって、それは「サステナブルなブランド」をつくることではなく、「サステナブルな関係性」をつくることかもしれません。
誠実に続けること。美しさとやさしさを両立させること。
ロクシタンの歩みは、そのシンプルな真実を静かに教えてくれます。