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2025.08.18

進化するSK-Ⅱ──選ばれ続ける背景とは 

40年を超える歴史を持つスキンケアブランド「SK-Ⅱ」。そのロングセラーを支えるのは、単なる“美肌効果”だけではありません。常に変化する市場や価値観に合わせて、ブランドのあり方や伝え方を柔軟に進化させてきた点に、多くのブランド担当者が注目しています。 

本記事では、SK-Ⅱのマーケティング戦略の変遷をひも解きながら、時代ごとの顧客ニーズへの対応、ブランドミューズの選び方、若年層の取り込みに向けた挑戦などを通じて、ロングセラーブランドが持続的に選ばれ続けるためのヒントを探ります。ブランド運営に携わる方々にとって、実践的な示唆となる事例が詰まっています。 

SK-Ⅱとは 

SK-IIのブランドコンセプトは「すべての女性に美しい素肌を」。SK-Ⅱは、肌そのものの美しさを引き出すことを使命とするスキンケアブランドです。その核心には、酵母の自然発酵から生まれた独自成分「ピテラ™」があり、「一時的なカバーではなく、根本的な肌質改善を目指す」ことがブランドの軸となっています。また、現代では「#ChangeDestiny(運命を、変えよう)」というスローガンを掲げ、外見だけでなく生き方や内面の強さにもフォーカスし、自己実現を後押しするブランドへと進化しています。 

SK-Ⅱ誕生のきっかけ 

1970年代、ある日本の研究者が酒造りに携わる職人の手が年齢に比して驚くほど若々しいことに気づいたのがSK-Ⅱ誕生のきっかけです。この観察から酵母の力に着目し、研究を経て誕生したのが、天然酵母の発酵過程から抽出された成分「ピテラ™」です。 

引用:2025年8月7日 SK-Ⅱ公式 

https://www.sk-ii.com/our-story?srsltid=AfmBOooWS1p8MUacy9Arx0502rUhRR9o7npSRnXZWtnIodMui3iDqnom&utm_source=chatgpt.com

SK-Ⅱの独自成分ピテラ™は、350以上の候補から選ばれた天然由来成分で、50種以上の微量栄養素を含み、肌の再生を促進します。シワやシミ、くすみに働きかけ、輝きある若々しい肌へ導きます。合成では再現できず、日本・滋賀県で伝統と先端技術を融合させて製造されています。SK-Ⅱは純度と品質にこだわり、長年の研究と技術革新により高い効果を提供し続けています。 

引用:2025年8月7日 SK-Ⅱ公式 

https://www.sk-ii.com/our-story?srsltid=AfmBOooWS1p8MUacy9Arx0502rUhRR9o7npSRnXZWtnIodMui3iDqnom&utm_source=chatgpt.com

ピテラ配合製品が愛される理由とは 

そんなSK-Ⅱのピテラ™配合製品が約40年にわたって支持され続けているのは、実際に肌に変化をもたらす成分効果と、製造から販売まで徹底された品質管理体制にあります。 

ピテラ™配合製品の成分効果 

ピテラ™は、天然酵母の発酵過程から生まれた唯一無二の成分で、アミノ酸、ビタミン類、ミネラル、有機酸など50種類以上の微量栄養素を含有。これにより、肌のターンオーバーを整え、くすみや小ジワ、乾燥、毛穴の目立ちなどに総合的にアプローチします。実際、SK-Ⅱの代表製品「フェイシャル トリートメント エッセンス」は、肌の明るさ・なめらかさ・潤い・弾力・キメといった5つの要素をバランスよく改善するとして、多くのリピーターを生んでいます。 

徹底された品質管理 

品質面では、滋賀県の自社工場で全製品を製造し、日本の伝統技術と最新の科学的知見を融合。製造工程では温度や時間を0.1単位で管理し、わずかな変化も見逃さない徹底した品質管理が行われています。さらに、製品出荷時には100以上の品質チェック項目を通過する必要があり、ラグジュアリースキンケアとしての信頼を確保しています。 

引用:2025年7月28日 SK-Ⅱ公式 

https://www.sk-ii.jp/secret-key

高品質を保つ工夫が詰まった商品であるからこそ、ユーザーからの実感と信頼を獲得しています。 

ユーザーからの声 

「SK-IIは敷居が高いと思っていたけど、肌の変わりように感動しました。とにかくぷるんと潤いに溢れて手に吸い付くし、メイクのノリも断然良くなりました!」 

「肌がモチモチするというかプルプルになるというか、水分をきちんと含んだ柔らかなお肌になってきたな~と実感してます。」 

「さっぱりとした使用感なのに肌にぐんぐんと化粧水が浸透して保湿された感じがしました3回にわけて肌になじませるとよりモッチリ肌になりました」 

引用:2025年8月7日 アットコスメ 

https://www.cosme.net/products/2937850/review

SK-Ⅱのマーケティング戦略の変遷 

グローバルスキンケアブランド「SK-Ⅱ」は、1980年の誕生以来、変わらぬ品質とともに、時代に即したマーケティング戦略を展開し続けてきました。特にその戦略の変遷には、ブランド構築や消費者コミュニケーションなど参考にすべき点が多くあります。 

マーケティング戦略の変遷 

【 初期(1980年代~1990年代):製品力と専門性の訴求】 
  • ピテラ™の科学的効果を中心に訴求し、エビデンスを重視したプロモーションを展開。 
  • 百貨店を中心とした対面販売によるカウンセリング形式で、信頼と安心感の醸成を図った。 
  • 主に肌への“機能的効果”を軸に、高価格帯にふさわしい「高級感」を強調。 

引用:2025年8月7日 東急百貨店 

https://www.tokyu-dept.co.jp/kichijouji/shop/detail.html?shopcode=sk2&srsltid=AfmBOorsCHOlv49Xx0gw0u-5LmtqIt0ahaO9QOyTg_m0VA64hvUrLixp

ピテラ™を知るきっかけと認知の広がり 

多くの消費者がピテラ™を初めて知るのは、著名人を起用したテレビCMや雑誌広告を通じてです。これらの媒体で「透明感のある肌」の象徴として印象づけられ、SNSや美容レビューサイトでの体験談がさらなる共感を呼んでいます。加えて、百貨店のカウンターでの対面説明や肌悩みの検索を通じて製品に出会うケースも増え、認知は多様な情報経路を経て広がっています。 

【中期(2000年代~2010年代):ブランド価値の拡張】 
  • グローバル展開の加速にともない、国・地域別のマーケティング戦略を強化。 
  • 女優やモデルなど「美の象徴」となるミューズを起用し、ラグジュアリーな世界観を構築。 
  • 一方で、デジタル媒体の普及により、従来の一方向的な広告から、SNSやWebを通じた参加型コミュニケーションへと移行。 
【現代(2015年~現在):共感と社会性を軸にしたストーリーテリング】 
  • ブランドスローガン「#ChangeDestiny(運命を、変えよう)」のもと、女性の生き方や価値観を応援する社会的メッセージを発信。 
  • 「すっぴん素肌プロジェクト」など、リアルで飾らない美しさをテーマに、インフルエンサーや実在の女性たちを起用。 
  • 科学的根拠の訴求は維持しつつも、感情に訴えるストーリーや、多様性・包括性や価値観を前面に打ち出している。 

引用:2025年8月7日 SK-Ⅱ公式インスタグラム 

https://www.instagram.com/p/BjvwmC2HVsN

転換期 

【ピテラ™配合ファンデーション販売終了とスキンケア特化の理由】 

かつてSK-Ⅱはピテラ™を配合したファンデーションを展開し、高い人気を得ていました。しかし、2021年6月末に販売を終了しスキンケア製品に特化することを決定。これは、ブランドの根幹が「肌を根本から美しく整えること」にあるという理念に基づくものです。一時的なメイクアップ効果よりも、肌質改善を重視する方針へと転換し、ピテラ™の効果を最大限に活かせるスキンケア製品群に注力しています。こうしてSK-Ⅱは“素肌の美”を追求する唯一無二のブランドとしての地位を確立しています。 

SK-IIの戦略ポイント 

このような変遷を辿ってきたSK-IIは、以下のようなマーケティング戦略のポイントがあると言えます。 

理念とストーリーによる差別化 

ブランドの強さは、製品の機能性だけで築かれるものではありません。たとえば「#ChangeDestiny(運命を、変えよう)」のように、社会的意義を持つスローガンを掲げることで、消費者との間に深い感情的なつながりを生み出すことができます。その際に重要なのは、単なる製品説明ではなく、「ブランドとして何を信じ、どんな価値を提供するのか」という理念を語る姿勢です。こうしたストーリーテリングは、製品の魅力を超えてブランド全体の存在意義を際立たせます。 

透明性と信頼性の確保 

現代の消費者は、表面的な美辞麗句よりも誠実さと裏付けを求めています。実際の素肌を使ったプロモーションや、成分ピテラ™の効果を科学的根拠とともに発信することで、リアルさと信頼性を両立することができます。透明性の高い情報提供は、疑念を払拭するだけでなく、ブランドと顧客との長期的な関係構築の礎となります。 

共感を軸としたインフルエンサーマーケティング 

美しさの定義を広げ、多様な価値観やライフスタイルを尊重することは、ブランドをより多くの人々に支持される存在へと進化させます。そのためには、起用するインフルエンサーや発信するメッセージを「誰に、どんな共感を与えるのか」という基準で設計することが不可欠です。共感は一時的な話題性ではなく、長く記憶に残るブランド体験を生み出す源泉となります。 

SK-IIの今後 

ロングセラーゆえの課題と若年層取り込みへの挑戦 

長年の愛用者層とともにブランドも成熟し、新たな若年層の獲得が課題となっています。伝統的な価値観を重視する既存顧客に寄り添いながらも、現代の多様なライフスタイルや美意識とのズレが売上の伸び悩みを招いていました。これに対応するためにSK-Ⅱは以下のような取り組みを行っています。 

多様なミューズの起用 

引用:2025年7月28日 SK-Ⅱ公式 

https://www.sk-ii.jp/skin-concern/all

「#ChangeDestiny(運命を、変えよう)」というコンセプトと共に、綾瀬はるか、渡辺直美、有村架純、TWICEのミナといった多様な世代や価値観を象徴するミューズを起用しています。 

デジタルネイティブへの最適化:SNS・YouTube戦略 

SK-ⅡはYouTubeで「SK-Ⅱ STUDIO」を立ち上げ、社会的課題×美の物語をアニメーションやドキュメンタリー形式で発信しています。これは、エンタメとして楽しめるコンテンツを通じて若年層に接触する試みです。 

体験型マーケティングの導入 

引用:2025年8月7日 PR TIMES 

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000077.000018267.html

一部都市で展開された「SK-Ⅱ未来X(Future X)」などの体験型ポップアップストアでは、AI肌診断やAR体験などを通じて、ブランドと“遊びながら”接点を作る機会を提供し、従来のカウンセリング型とは異なる「デジタル×遊び」の導線が、若年層の参加障壁を下げています。 

ミューズ選定の重要性 

この3つの取り組みの中でも SK-Ⅱではミューズ起用に力を入れています。 

SK-Ⅱのミューズ選定は、単なるルックスや年齢によるものではなく、ブランドの核となる理念「#ChangeDestiny(運命を、変えよう)」を体現できる人物を選出するという明確な戦略に基づいています。たとえば、女優・綾瀬はるかは「透明感」ある美しさの象徴であると同時に、長年にわたる挑戦的なキャリア形成が評価され、ブランドの信頼性向上に貢献しています。また、渡辺直美やTWICEのミナといった異なる個性を持つミューズの起用は、多様な価値観に開かれたブランド姿勢を示し、特に若年層・グローバル市場への訴求力を強化しています。 

このようなミューズの起用は、単なる広告塔ではなく、「理念を語る存在」として機能し、ブランドのストーリーテリングと社会的共感の獲得に直結しています。結果として、ブランドの認知のみならず、信頼・支持・購買意欲の持続的向上に寄与しており、戦略的にも極めて合理的です。 

まとめ:SK-Ⅱの事例からブランド担当者への示唆 

SK-Ⅱのブランド戦略は、時代の変化に対応しながらも、核となる価値を一貫して伝え続けてきた点において、すべてのブランド担当者にとって極めて示唆に富む事例です。 

まず、「ピテラ™」という独自成分を軸に据えた製品開発と、その成分の科学的効果を根拠とする訴求は、商品力をブランド価値に昇華させる模範といえます。単なる機能訴求にとどまらず、「肌を根本から変える」という理念がブランドストーリーの中核を成し、長期的な信頼の獲得に貢献しています。 

また、マーケティング戦略の変遷においても、製品の機能的価値を軸とした初期段階から、ライフスタイルや社会的メッセージを含む「#ChangeDestiny」のような情緒的価値の訴求への移行は、現代のブランドコミュニケーションにおいて欠かせない視点です。特に、多様性や自己実現を肯定する姿勢は、消費者との共感を築く上で極めて有効であり、価値観でつながるブランドづくりの好例といえるでしょう。 

さらに、インフルエンサーやミューズの起用においては、見た目だけではなく「ブランドの理念に共鳴し、体現できる人物」を選定している点が特筆されます。これにより、広告活動が単なる販促ではなく、ブランドメッセージを社会に伝える“語り部”の役割を担うようになっており、ブランドの信頼性と共感性を高める大きな要因となっています。 

そして、若年層の獲得に向けた戦略では、SNS・YouTubeを活用したストーリーテリングや、AI・ARを用いた体験型マーケティングなど、デジタルネイティブに最適化されたタッチポイント設計がなされています。ブランドが築いてきた伝統と、新たな価値観への対応を両立させることで、長期的なブランド資産の維持と拡張を実現しています。 

このように、SK-Ⅱの戦略は、「製品開発・ブランド理念・ストーリーテリング・顧客体験のすべてを一貫した文脈でつなぐ」という点で極めて戦略的です。 

ブランド担当者がこの事例から学べるのは、「変えない“核”と、柔軟に変える“表現”のバランス」によって、長期的なブランドの持続可能性と新たな顧客層の開拓を同時に実現できるということでしょう。