目次
はじめに
近年、美容業界ではAIやARを活用したパーソナライズ提案の需要は拡大し、顧客一人ひとりの肌特性や好みに応じた体験が求められるようになっています。加えて、コロナ禍を経てオンライン接客が定着し、遠方や多忙な顧客にも専門家のアドバイスを届けられる環境が整いました。こうした変化を背景に、美容企業は単発の購入ではなく、顧客との長期的な信頼関係に基づくLTV経営へと転換しつつあります。本稿では資生堂や花王などの大手企業が、診断結果というデータをいかにしてLTVに繋がるコミュニケーションに昇華させているのか。その具体的なシナリオ設計と、現場を巻き込む仕組みを分析し、テクノロジー投資を回収する方法を解説します。
美容業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の現在地
最近の美容業界では、AIやARを活用した肌診断やバーチャルメイク、オンラインカウンセリングなどの導入が急速に進んでいます。このデータを活用し、顧客の肌特性や購買履歴に応じたパーソナライズ提案を行うことで、LTV向上につなげる取り組みを加速させています。また、資生堂や花王の事例に見られるように、DXは単なるAI導入やオンライン化にとどまらず、商品開発や現場スタッフとの連携、マーケティング施策へのデータフィードバックまで含めた全社的な変革として進められています。美容業界のDXは、顧客データを活かして価値を生み出し、それを次の施策や商品に循環させる仕組みとして定着しつつあります。
事例分析:資生堂・花王の最新AI/AR活用事例とその狙い、診断データの応用力でLTVに繋げる
オンライン診断やAIカウンセリングを通じて得られる肌データは、一人ひとりの継続的な関係構築へと活かされつつあります。資生堂や花王はAIやARを顧客理解を深める循環システムとして活用しており、その診断データの応用力こそが、ブランドの顧客生涯価値を押し上げるのに重要な要素です。
事例①資生堂「パーソナライズレポート」
パーソナライズレポートは、Beauty Keyアプリに組み込まれており、お客さまの肌特性や状態に基づいて、季節ごとの肌ケアのポイントを理解いただき適切なケアを促進することを目的としています。季節ごとに必要なお手入れのポイントが異なるので、季節とお客さまの肌状態に合わせて、ぴったりのお手入れ方法をパーソナライズレポートでアドバイスします。それによって、定期的に接点を図り、LTVの向上に繋げています。

https://note.shiseidointeractive.com/n/nd173b72494a4
事例②資生堂「Beauty DNA Program」
こちらも、Beauty Keyアプリに組み込まれているもので、DNAという誰1人として同じものを持たない情報を基にスキンケアや生活習慣のアドバイスを行う、パーソナライズサービスです。ユーザーごとに最適化された体験を提供することでライフタイムに寄り添う仕組みです。

事例③花王「肌id」
「肌id」は、ユーザーひとりひとりに合わせたパーソナルケアを推奨するプラットフォームとして、LINEと完全連携したパーソナルスキンケアサービスです。写真を撮るだけで自分の肌状態がわかる「カンタン肌チェック」や、肌悩みなどにトーク上でAIが答えてくれます。LINEから手軽に始めることができ、ストレスなく使いやすい仕様になっています。このような無理なく使うことのできるUI・UXデザイン設計が高いエンゲージメント獲得に繋がる重要な要素となっています。

https://www.perfectcorp.com/ja/business/successstory/sofina-hadaid-ja
事例④花王「エリクシールAIスキンアナライザー」
「エリクシール AIスキンアナライザー」は、スマートフォンを通じて簡単に利用できるオンラインツールです。資生堂の長年にわたる皮膚科学研究と先端のデジタル技術を融合して独自開発した、エキスパート研究員と同様の肌状態判定が可能なAIプログラムを搭載しています。最近では、AIチャット機能が追加され、肌測定結果を踏まえ、顧客の個別の肌悩みやライフスタイルに基づくソリューションを提案することができます。こうした個別最適化の積み重ねが顧客との長期的な関係構築を可能にしています。

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000004067
診断後のネクストアクション設計
AI診断で得られたデータを起点に、購買へのサイクルに繋げていくことが重要になります。診断結果をもとにECや商品開発に展開し、一過性の体験で終わらせないためにどのような工夫がなされているのかを見ていきます。
事例①資生堂「VOYAGER」
一例としては、「クレンジング製剤技術」と「スキンケア処方技術」の掛け合わせから着想を得て開発した試作処方が挙げられます。クレンジングの“濃密な泡立ち”と“さっぱりとした洗い上がり”という両立の難しい課題に対し、スキンケア処方の知見を組み合わせることで、両方を実現した洗浄剤の試作に成功しました。

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003893
事例②花王「肌レコ」
肌レコでは、自撮りによって、結果に則したお手入れ方法やアドバイスが表示されます。継続利用すると「肌レコマイル」が貯まり、さまざまなキャンペーンの応募ができるなど、続けたくなる仕掛けになっています。さらに、そのアドバイスに基づいた化粧品をECサイト「My Kao Mall」で購入することができます。
https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2023/20230330-001/
これらの事例に共通するのは、テクノロジーを活用してユーザーにとっての体験の質を高め、購買や継続利用へとつなげている点です。現在、化粧品業界では 診断技術・パーソナライズ提案・EC導線・ロイヤリティ施策 がこれまで以上に密接につながり、LTV向上に直結する仕組みづくりが求められています。この時代において、ユーザーとの継続的な接点をどのように設計するかが重要なテーマとなっています。
AIと美容部員との連携―DXを現場に巻き込む仕組みとは?
デジタル診断やAI提案だけでは顧客一人一人に対する提供価値に限界があります。そこで重要になるのが美容部員との連携です。資生堂では、お客さまの購買履歴や美容部員との応対履歴などを管理されています。オンラインと店舗をつなぎ、リアルな接点を設計することで、顧客体験を継続的に高め、LTV向上につなげる仕組みを構築しています。
事例①資生堂「Omise+」
「Omise+」とは資生堂のお店をオンラインで体験できるサービスです。また、プロの美容部員からカウンセリングを受けられるサービスも含まれています。そして、その商品を近隣の店舗からサンプルとして送付し、店舗との間に繋がりを生み出します。

事例②資生堂「OMO」
Beauty Keyアプリや公式オンラインストアから予約できるWeb美容相談では、ビデオ通話やチャットで美容部員と1対1の対話が可能です。このオンラインカウンセリングでは、AIとAR技術を使って、リアルタイムでユーザーの顔に色味を試すことができます。遠方や多忙な人でも専門家のアドバイスを受けられ、単発購入にとどまらず、継続的なリピート購入を促すことが期待されます。
AIを儲かる仕組みとして設計する
AIに投資する際は、再購入率や顧客単価の向上、診断結果からの購買へのつながり、さらに顧客データを活用した商品開発のスピードなどの指標をあらかじめ設定することが重要といえます。それらを設定することで、顧客の行動や購入パターンにどの程度影響を与えているかを可視化できます。その結果、改善策や次の施策を具体的に検討でき、AIやデジタル施策による体験提供が顧客の継続的な利用やリピート購買を生み出し、LTV向上へのつながりに活かすことができます。これは、投資回収にも繋がります。
まとめ
資生堂や花王はDXを活用して顧客との関係を深め、LTV向上につなげる設計を行っています。両社に共通してみられるのは、テクノロジーはあくまで手段にすぎず、それによって得られるデータをもとに、サービスや商品を改善し、顧客との接点を最適化していることです。こうした改善の積み重ねがDXの成果につながっているといえます。
お知らせ
当社(株式会社WTC)でも、化粧品領域で培ったブランド理解と、データ分析・クリエイティブ制作・デジタル施策を掛け合わせることで、AI診断データを購買行動へつなげる取り組みを進めています。化粧品ブランド向けにWeb制作からプロモーション、広告運用までを一気通貫で支援する体制を整えているため、診断コンテンツで得られたデータを起点に購買に直結する導線をワンストップで構築することができます。
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